私は神戸でパティシエ修行を8年していましたが、生まれ故郷である広島県尾道市瀬戸田町に帰省するといつもなんだかさみしい感じがしました。
都会で華やかな神戸とは違って、地元瀬戸田では深刻な過疎化が進み、有名な造船業や多くの農家さんには昔のような覇気が感じられないような気がする…。
自分も含め、高校の同級生だった友達の多くは島を離れ、若い人が少ないなぁ・・・。
幼い頃、こんなに寂しい島だったかな?子供ながらに感じたことは、島の人たちは毎日笑顔に溢れ、とてもエネルギッシュで、そこにはたくさんの家族が住んでいて、あったかい島でした。帰省する度に、生まれ育ち多くの恩を感じるこの島のたった数年間で変わってしまった状況に、寂しく心苦しい想いを感じていました。
島に対して私が出来ることは何だろう?もう一度、島に活気を取り戻すためにはどうしたらいいんだろう?
神戸へ帰った後も、私の頭の中でグルグルと回り出すこの2つの疑問。
しかし、日々の忙しさに追われ島のことはだんだん思い出さなくなっていきました。
そんな中当時、私には初めての子供が生まれました。
可愛いくて、愛しくて、少しずつですが親になった責任感が芽生えてきました。
そんな我が子の成長を見ていくに連れ、自分の幼少期と度々重ね合わせ、また不意に島のことを思い出しました。
この子が育つ未来に・・・ たった短期間で変わってしまったあの故郷はこの先どうなってしまうのだろうか。
今、少しでも私が出来ることといえば神戸で昼夜問わず修行に励んだスイーツ作り。
幸い、この島には洋菓子によく使われるレモンが日本一の生産量を誇っている。
神戸の菓子作りの技術と地元の日本一のレモン…。
この2つをうまく組み合わせれば、大きな可能性があるんじゃないだろうか。
私は決断しました。 故郷の島のために、我が子や島で育つ子供たちの未来のために。
日本で消費されているレモンの多くは外国産が9割以上を占めていますが、生まれ育ったここ広島県尾道市瀬戸田町は国産レモン生産量シェアが日本一という素晴しい農産物があります。
また他の柑橘類とは違い、一年中生果が収穫できるので四季折々その時期にしか味わえない旬の味をお客様にダイレクトに提供できるという最大のメリットもあります。
お店を開業した当初、本場神戸でスイーツ作りの修行に励んだ経験を生かし、田舎ではなかなか味わうことが出来ない神戸の味『ロールケーキ』を主力商品として販売していました。
もちろん、ここには国産瀬戸田レモンという素晴しい食材があったのですぐにレモンを生かしたスイーツ作りにも取り掛かりました。しかし、なかなか私が表現したいレモンの味ができず試行錯誤を繰り返す毎日で、まだまだ店頭に並べられるほど納得がいく商品の開発はできないままでした。
3ヶ月が経ちそんな悶々とした日々の中で、常連のお客さんの一言。
「土産になる焼き菓子かぁ…。」
ふとオーブンの横に目をやると神戸の修業先の師匠から「レモンの島やったらレモンケーキやろ。この型使ってないから持っていけ」と言われて持たされたレモンケーキの型が…。
瀬戸田には昔からあるレモンケーキ。競合もいっぱいあるけど、自分にしか、瀬戸田でしか、できないレモンケーキもあるはず。
従来のレモンケーキは最後にホワイトチョコレートでコーティングするというのが一般的。
でもチョコをコーティングすることでチョコの甘さに、レモンが本来持つ香りがかき消されているような気がしていました。また、瀬戸田レモンをすり下ろしたり、果汁を入れただけではえぐみや酸味が際立ち、瀬戸田レモン特有の香りが活かされませんでした。
それを打破するために、地元で採れた風味豊かな瀬戸田レモンの皮にある油包を壊さないように細心の注意を払いならがら1つ1つ手作業で丁寧に刻み、手間を惜しまずゆっくりじっくり甘く煮込み国産レモンの味わいをより一層引き立ててみてはどうか
生地は神戸で学んだ焼き菓子の技術をもとに柔らかくしっとりふんわり仕上げる。
ホワイトチョコのコーティングは一切せず、上には洋酒の風味高いレモンシロップのみを打つ。
機械をほとんど使用できず、味にごまかしの利かないこの製法ですが瀬戸田レモンが本来持っている香り、旨みを最大限に活かせることができました。
従来のレモンケーキの概念を一切払拭し、お店を開いてから約1年間後、研究に研究を重ねてやっと店頭販売に踏み切ることができました。
販売当初は全く予想だにしなかったことですが、嬉しいことにすぐに多くのお客様の注目を頂き、たった2年で累計16万個以上、年間約2トンもの瀬戸田レモンを使用するまでとなり今では当店の看板商品です。
地元をはじめ広島県内の百貨店さんを中心に、ネット販売なども好評で日々全国のお客様から
「レモンケーキの概念が変わりました」「心の底から幸せです」「これこそレモンケーキ!!」っと
感銘を受ける本当に貴重なお言葉を頂戴しております。
一時は瀬戸田レモンを生かした商品開発がうまくいかず幾度となく壁にぶち当たり途方に暮れていた時期もありましたが、自分自身がこの味に納得でき、また昔からこの地で育まれている香り高い瀬戸田レモンを最大限にいかすレモンケーキを製造できたことは心から嬉しく思います。
2011年、第51回全国推奨観光土産品審査会にて『日本観光協会会長賞』を受賞することができました。
全国観光土産品連盟とは、観光地のお土産を元に地域の発展と振興を測る伝統ある協会です。
言葉で表現するととても難しそうに聞こえますが、
パティスリーオクモトの理念は
『瀬戸田の価値ある産物を磨きに磨き、光輝く宝物として全国の皆様に提供し続けること』
の願いを込めて、お持ち帰りできる瀬戸田レモンケーキのお土産品販売にも力を入れてきました。
お陰様で今では本店を始め県内7箇所で販売を行うことが出来ております。
もちろん、思考錯誤を繰り返し様々な意見を頂戴しながら生まれた瀬戸田レモンケーキですが、こんな大きな賞を受賞できたのは支えてくれた家族、一緒に働いてくれている同級生、レモンに携わる農家さんやJAの皆様、
そして忘れてはいけない一番大きな協力者は生口島の島民の皆様のご支援があったからこそだと思っております。
地域の皆様と共にこれからも瀬戸田レモンを最大限活用したスイーツ作り、パティスリーオクモトから多くの人に発信していき、生口島と共に歩んでいけるお店でありたいと思います。
新着情報
オーナーシェフ 奥本 隆三
1982年3月13日生まれ
尾道市瀬戸田町出身
2008年3月神戸のボックサンで修行
2008年4月より尾道市瀬戸田町で洋菓子店を開業する >> 詳細
瀬戸田檸檬菓子工房
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